聞き手たちが語る、 ありのままの子ども インタビュアー座談会【中編】

中学2年生たちへのインタビューを担当した聞き手たちが、2021年度調査をふりかえる全3回の座談会企画です。調査に協力してくれた33人の中学生たちは、住んでいる場所も、好きなものも、「らしさ」もばらばら。だけど、それぞれの生活や趣向、そしてある種の切実さに根ざした写真や語りには、それぞれになんともいえない魅力がありました。そんな33人と対話した聞き手たち3人が、それぞれの感じた「ありのまま」を語らいました。

座談会メンバー

マイペース

マイペース

このサイトのベースになっている調査(子どものありのままを捉える調査)の現リーダー。2019年度の調査スタート時からプロジェクトに参画。

向日葵

向日葵

こども研究所メンバー。2020年度の調査からプロジェクトに参画。

ミーハーおたく

ミーハーおたく

こども研究所メンバー。2021年度の調査からプロジェクトに参画。

インタビュー前の準備と共感ポイント

ここから具体的なインタビューの話題に入っていこうと思いますが、みなさんインタビュー前の準備はどんなことをされていますか?

向日葵

インタビューの前に撮影した写真や属性情報(プロフィール)をもらうので、そこに分からない言葉があれば調べたりしますね。

ミーハー
おたく

私もキーワードは調べたりしますが、そのときそのときの対話を大事にしたいなと思うので、「この子はこういう子かな」というのを想像しすぎないように気をつけていました。属性情報に引っ張られず、できるだけフラットでいたいなと。

マイ
ペース

私もプロフィールの「ハマっていること」や写真のコメントに知らない言葉があれば、事前に調べるようにはしていました。知らないゲームがあれば、どういうゲームなのか調べたりして。知ったかぶりをするつもりはないんですが、ゲームだったらそのゲームのどういうポイントにハマっているのかを語ってもらいたいので、その前段階の説明をしてもらわなくていいように予習していましたね。

ミーハー
おたく

あとは、事前情報から共感できそうなところはチェックしておくようにしていました。インタビューの相手が吹奏楽部の子なら、「私も吹奏楽部に入ってたんだ」みたいに、ここが話のきっかけになるなというアタリをつけておいたり。そういう共感ポイントから入ったほうが、そのあとの話もスムーズになるように思います。

どうしたら語りだしてくれる?

インタビューするうえで難しいなと感じるのはどういうときですか?

向日葵

あまりしゃべらない子のときは、「どうしよう……」と内心ハラハラしながらインタビューしていますね。特に相手がマスクをしていたりすると、表情も読み取りづらいうえに、ただ黙っているのか、何かを言おうとしているのかも分からないですし。何か言おうとしているなら、それを遮らないようにしようとは思うんですけど。

マイ
ペース

あまりしゃべらない子には無理して聞かないようにしてはいるんですが、待っても言葉が出てこないときはどうしてもこちらの質問が多くなってしまって。あとで(文字起こしを)読み返したときに、なんだか尋問しているみたいで「あぁ……」と思いますね。

ミーハー
おたく

どういう聞き方をしたらその子の語りが出てくるのかというのはすごく難しいですね。質問そのものはもちろん、こちらの雰囲気だとか、オンラインではあるけれど場づくりの仕方とか、自分がどう「いる」ことができたらその子は語りだしてくれるのかなってすごく悩みます。

マイ
ペース

あとはみんなが好きそうなものをまんべんなく好きという子は、どこから話をはじめたらいいか考えてしまうこともありますね。どこかひとつ尖ったところがあるような子、たとえば他の人とは違うものが好きだったり、何かを突き詰めていたりする子だと、そこを興味のきっかけにして話を聞いていけるんですけど。ただ、同じぬいぐるみが好きというのでも、一緒に寝ているという子もいれば、よだれがつくのが嫌だから一緒には寝ないし、ちゃんと棚に飾っているという子もいたりして。一見みんなと同じものが好きでも、その接し方や感じ方などを深く見ていくと、そこに一人ひとりの個性が出てくるのが面白いところですね。

ミーハー
おたく

なんで好きとか、どこが好きとか、その子ならではの感性とかものの考え方とかが見えてくると、興味が湧いてきますね。私は自分とは違う考え方とか感性をもっている人に関心があるので。

興味をもてたらおのずと対話に

これまでの経験のなかで気づいた「語りを引き出すコツ」や心がけていることはありますか?

向日葵

中学生とはいえ、相手も一人の人なので、子ども扱いしないようにというのは気をつけています。話しかけ方も、なるべく一人の人として接しているというのを出すようにしたりとか。子ども扱いしない大人にしっかり話を聞いてもらう機会もあまりないと思うので、たいしたことはできないですけど、1時間お話をして楽しく過ごしてもらいたいと思ってやっています。

マイ
ペース

その子の話すペースがあると思うので、話す速度とか、話し方の感じとか、できるだけ相手のペースに合わせるようにもしています。だけど、結局はその子にどれだけ興味が持てるかですね。その子の言葉だとか考え方だとかに興味をもてたらおのずと対話になるというか、向こうの言葉にも自然に反応できるように感じます。

ミーハー
おたく

私はいまでも後悔していることがあって。インタビューの最中にずっとパソコンで何かを打っている子がいたんです。私はそれがずっと気になっていて、「いま何してるの?」って聞けばよかったなといまでも心に残っています。その瞬間その瞬間の気になったことを聞くのも対話だと思うんですが、なぜかそのときは遠慮してしまって。インタビューの最中でもやりたいくらいのことだったと思うので、そのときに聞いていれば、その子らしさとか、写真では出てこないことが出てきたかもしれないなと。

インタビューをしていて嬉しくなるポイントってありますか?

向日葵

写真から写真へスムーズに話が移れたときは嬉しくなりますね(笑)

ミーハー
おたく

つながった!みたいな(笑)

向日葵

次の写真にスムーズにつなげられると、相手も違和感なく話をしてくれますしね。

マイ
ペース

私はうまく脱線させられたときですね。写真には写っていないんだけど、その向こう側にあるものについてお話ができたときは、その子の違った面を見ることができたようで嬉しくなります。

向日葵

最初は何を聞いてもあまり表情を変えずぼそぼそと返すだけであまりしゃべってくれなかった子が、ある瞬間から家庭環境のことなどナイーブなことも打ち明けてくれるくらい心を開いてくれたのは嬉しかったですね。どうしたらみんなが心を開いてくれるかは、まだつかめていないというか、分からないですけど。

14歳って戻ってこない

インタビューをしていて、中学生から気づかされたことはありますか?

ミーハー
おたく

「好き」を大事にしようと思いました。子どもたちの話を聞いているなかで、中学生の頃は私も吹奏楽部で毎日一生懸命やっていたけど、最近はぜんぜん熱中できることをやっていないなと思って、すっごく久しぶりに舞台を配信で観てみたりして。子どもたちに「好き」を教えてもらうなかで、自分も心が動くことをやってみようとなりましたね。

それはすごい!

ミーハー
おたく

中学生だからこそできることがあるし、そういう時間って貴重だなと思うんです。話を聞いていると、自分が子育てとか仕事とか日々の生活にいかに追われているか気づかされるし、私も石を磨きたいって本当に思います。

マイ
ペース

石磨きとか、ペン回しとか、そういうことに熱中できる時間って、たしかに貴重かもしれない。

向日葵

1対1で言うと説教くさくなっちゃうから直接は言わないですけど、14歳って戻ってこないから本当にいろいろなことを楽しんでほしいなと思うんです。好きなこともそうだし、恋愛でもなんでも、いろいろ失敗もして、とにかく楽しんでほしい。

他にも何かインタビューをするなかで気づいたことや学んだことはありますか?

向日葵

私が学んだことは、(前編で)傾聴の話が出ましたけど、人の話を聞くことですね。ついつい結論を急いでしまいますが、経緯を大事に人の話を聞きたいなと毎回思います。

マイ
ペース

私は、一人ひとりがとても豊かな個性とか人間性をもっていることに気づかされて、人を見ることが本当に興味深いことだと思うようになりました。それは子どもだけじゃないと思うんですけど、人のもっている面白さとか多面性にもっと気づけるようになりたいと、いまは思っていますね。

【後編】につづく

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