プロフィール
野村彩乃 (のむら・あやの)
ニコラ編集部員。別媒体の編集を経て、2021年から『nicola(ニコラ)』に編集者として携わる。
平野千晶 (ひらの・ちあき)
ニコラ編集部員。学生時代の同誌編集部でのアルバイトを経て、2022年から『nicola(ニコラ)』に編集者として携わる。
いまの中学生は恋愛に興味がないって本当?
恋愛についての企画も『ニコラ』の誌面にはありますよね。私たちのインタビューだと、恋愛にすごく興味がある子もいれば、どこまで本音を話してくれているか分からないですが、ぜんぜん関心がないという子もいて。恋愛への関心については、どのように感じますか?
私は2号連続で恋愛ネタをやっているんですけど、興味をもっている子が多いんじゃないかと思います。いまどきだなと思うのは、「好きバレ」ですね。
「好きバレ」とは?
「好き」って気持ちをバラすかどうかということです。意図的にバラす子もいれば、バレたくなくて内側でひしひしと思いを募らせるみたいな子もいて、意見は人それぞれなんですが。なかには「好きバレしたほうが自分のことを意識してくれそう」と言っている子もいて、みんなそれぞれ楽しんでいるんだなと感じます。あとはクリスマスに向けて、「恋愛コミュ力」といって好きな相手とのうまい接し方を取り上げる予定です。
クリスマスとかバレンタインが近づいてくると、「彼氏ほしい〜」ってみんな言い出しますよね。
そうですね。だから、(みんながみんな)恋愛に興味がないということはないと思います。モデル内ではよく恋愛の話をしていますし、好きじゃん結局、って思いますね(笑)
まわりから浮きたくないという心理の話が中編でありましたが、仲のいいグループのなかで一人だけ彼氏や恋人ができることはどうなんでしょう?
恋愛に関しては、仲間意識というより個人という印象があります。「友達に彼氏がいるから、自分も彼氏ほしい」とも聞かないですし、恋愛に関して寄せられる声はわりと自分自身の気持ちがどうということが多い気がします。
私たちの中学生へのインタビューでは「推し」の話がよく出るのですが、推しと比べて同級生が見劣りしてしまうという声をときどき耳にします。「推し」と「好き(恋愛)」との関係についてどう思われますか?
わりと推しは推し、好きな人は好きな人、という印象はあります。ですが、ニコ(モ)から「私の推し」と言いながら同じクラスの男の子の写真を見せられることもあって、推し文化がリアルな人間関係にも入ってきているのを感じます。
恋愛ネタも掲載された『nicola(ニコラ)』2022年11月号の誌面 ©新潮社
「自己肯定感」「モチベ」「ビジュ」
「推し」という言葉があることで、自分の気持ちを気軽に出しやすくなった側面もあるのかもしれないですね。そのほかに、最近よく聞くキーワードはありますか?
「自己肯定感」とか、「モチベ」という言葉を、中学生からよく聞くなと感じます。プリクラのデコスタンプだったりとか、化粧品のキャッチだったりでもよく見ますし、私たちの誌面でも使うようになりました。「ちょっと特別なスキンケアを使って自己肯定感を上げていこう」とか、「部活も忙しいのに、勉強もして、スキンケアもして、お洒落もして、がんばっていて私えらい」とか、自分磨きをすることがポジティブにとらえられるようになったように思いますね。
2022年12月号では「ビジュ」という言葉が登場していました。ビジュアルのことだと思いますが、どういう使い方をするのでしょう?
今日、ビジュいいね。
見た目が盛れているとか、そういう意味ですね。モデルたちもよく「今日ビジュよくない?」という会話をしていますし、読者からもアンケートで「クリスマスに向けてビジュを完成させる」という言葉もちらほら寄せられています。もともとは、「推しのビジュがいい」とか、推し用語(推し活に関連した用語)だとは思います。
「ビジュを完成させる」という表現は、何か理想像があってそれに近づけるニュアンスを感じます。現在は、理想も多様化している気もしますが、以前のようなみんなが共通して憧れる存在はいるのでしょうか?
K-POPアイドルが多いのかなと思います。
特にこのアイドルという人はいるのでしょうか?
ウォニョン(IVEのメンバー)……
私も思いました。IVE(アイヴ)とかKepler(ケプラー)とかのメンバーを挙げる子が多いかなと。ファッションもメイクも参考にしている子が多い印象がありますね。
中学生とのコミュニケーション
モデルさんなどの中学生とコミュニケーションするうえで、何か心がけていることはありますか?
私は編集部内でもニコ(モ)と一番年齢が近いので、お姉ちゃんみたいな存在になれたらいいなと思ってしゃべっています。そうしたら、「平野さんめっちゃギャルですよね(笑)」みたいに言われるようになりました。もちろん遊び相手ではないという線引きはお互いに重々承知のうえで、よりフランクにというか、話しやすい存在になれたらいいと思って接していますね。
脱線しますが、「ギャル」っていまはどういうニュアンスで使われるのでしょう?
なんですかね、ポジティブみたいな意味ですかね。見た目というよりマインドですね。ギャルマインドとか言いますし。
野村さんは、中学生とのコミュニケーションで心がけていることはありますか?
壁を作りすぎると撮影もうまくいかなくなってしまうので、妹と話す感覚というか、恋愛ネタを話すときは友達と話すような感覚でいますね。「彼氏とどうなんですか?」とモデルに聞かれたら、私も同じ目線に立って話したりとか。水を差さないというか、一緒に盛り上がることは意識しています。
お二人のお話をうかがって、壁を作ったり、はぐらかしたりしないというのがポイントなのかなと感じました。聞かれたことに答えるというだけでなく、積極的に自分のことを話したりもされますか?
私はけっこう話しますね。「この前こんなことがあったんだけど、ありえなくない?」とか。そういうところがギャルと言われてしまうのかもしれないです(笑)
私も考えてみたら、自分のことを話しているかもしれないです。「部活が忙しくて夏休みにどこも行けない」と言って自虐モードに入っているモデルの子には、「私、バンジー行ってくるよ」みたいにテンションあげて話すことで、「そういえば私もどこどこ行きます」みたいな会話を引き出したりとかしますね。
誌面を作るうえで、表現として気をつけていることは何かありますか?
個人的には「男らしい」とか「女らしい」という表現は避けるようにしています。柔軟な時期だからこそ、そういう思考を刷り込むのはよくないなと思って、別の言葉に置き換えたりします。あと「痩せよう」ということも言わないですね。
編集部全体の風潮として、偏った表現や、言い切る表現はしないというのもありますよね。「これいいよ!」と言い切らずに、「これやってみよう!」みたいに置き換えたりとか。
最後に、お二人が考える中学生くらいの子たちの魅力を教えていただけますか?
大人よりもまっすぐなところですかね。何に対しても一生懸命で、1聞いたら10答えてくれるような子もいて、そのまっすぐで一生懸命なところが魅力だと思います。あと、情報収集力も、時代についていく力も、私たちよりぜんぜん上だと思うので、それは見習いたいなと思います。
いま彼女たちにできる全力の努力をかわいくなるために費やしている姿を見ると素敵だなと思いますね。探究心もあるし、新しいものも好きだし、かわいくなることや好きなことに対する(中学生たちの)熱量は伝えたいなと思います。
(おわり)