インタビュー

研究コラム

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子どもと動画のしあわせな関係づくり

お笑い芸人、タレント・小島よしおさんに聞く

「こども定点2023」の調査結果によると「動画をみる」はいまの子どもたちの生活の一部。子どもに人気の動画は、音楽、ダンス、アニメ、ゲーム実況などエンタメ性が高いものから、教育・教養的なものまで幅広くなり、ひとり、もしくは友だちや家族と一緒に楽しむのはもちろん、授業の中で補助教材として使用されるなどにも広がっています。
今回は、「小島よしおのおっぱっぴー小学校」「ピーヤの休日」などの動画チャンネルが子どもたちに大人気の小島よしおさんに、子どもと動画の関係についてお話をうかがいました。

子どもって集中できる時間が短くて、興味がなくなっちゃうと離れちゃう。

小島さんは、新型コロナで一斉休校になった直後から「小島よしおのおっぱっぴー小学校」で子どもの学びを支援する動画を配信されていて、教育系動画の先がけ的存在だと思うのですが、子どもや保護者からの反応はどうですか。

やっているネタは昔から変わっていなくて、「教育に良くない!」と言われがちなんですが、教育系動画をはじめたことで、見られ方がすごく変わり、感謝されることがすごく増えたなって思います。ただ、格好が海パンということもあり、それに対して怒る人もいたので、動画の中では上半身はTシャツを着るようにしました(笑)
実は、動画は2020年から1年間ですごくたくさん作って、最近はほぼゼロなんですが、いまでも「この前、動画を見ました!」と感想をくれる子どもや親御さんがすごく多いです。学校の先生や教育関係の方からも「授業で使わせてもらっています」という声を頂いたりして驚いています。

子ども向けということで、内容や接し方などで気を付けていることはありますか?

ライブもそうなんですが、参加型にして、一方的に話し続けないようにすることでしょうか。あとは言葉だけじゃなくて動きとか見た目的なところでも、興味を惹きつけられるようなネタを入れることを心がけています。動画の中でキャラを変えたり、人形を使ったり、背中に文字を書いたり…(笑)
僕自身もそうなんですけど、子どもって集中できる時間が短くて、一回興味がなくなっちゃうと離れちゃう。だから、すぐにネタを始めたり、10分ぐらいの短い時間でまとめたり、そういうことも気を付けていますね。

僕は先生の競合じゃない。みんなで勉強が苦手な子を減らせればいいし、みんながハッピーならいい。

小島さんの動画は、子どもがいっしょに参加できる状況をつくったり、子どもの笑いや体の動きなどの身体的な反応を上手に引き出したりしているなと感じます。「笑い」や「身体性」についてはどう意識されているんですか。

僕は芸人なのでその特性を活かして「笑い」を入れるっていうのはもちろんあります。特に教育系動画の場合は、学校とか塾の先生と同じようにはならないようにしています。
あとは「わかりやすさ」でしょうか。僕の動画は、普通の授業についていけない、勉強がよくわからない、面白くないみたいな子が、「勉強って面白いかも!」って思えて、学校や塾の授業に戻っていけるっていうふうになればいいなと思っています。授業のサポート的な感じ。だから勉強ができるようになる、というより、わからなくてついていけなくなるのを防ぐみたいなイメージです。

なるほど、小島さんの優しさを感じます。子どもって毎日接している大人よりも、他の人に入ってもらった方がすっと心を開いていけるっていうところもあるので、そこに小島さんがフィットされたんじゃないかしらと思いました。

以前、学校の先生と対談したときに、嫉妬というか「うらやましい」みたいなことを言われたことがあるんです。「私たちはカリキュラムを考えながらやっているのに、小島さんは小5やって小2やって小3やってみたいに、好きな順に自由にやれていいなぁ」みたいな感じで。逆にそこで気づかされたというか、考えが整理されたというか、先生たちのサポートとしての自分の立ち位置を再認識しました。僕は先生の競合じゃないんです。みんなで勉強が苦手な子を減らせればいいし、みんながハッピーならいいっていう感じなんです。

僕の動画には作家さんがいてディレクターさんがいて塾の先生がいて、みんなでいっしょに作っている。僕の他にも授業動画を撮っている人たちはいて、子どもが僕の動画をみた後に別の動画を見て、そっちで勉強がわかればそれもいいなって。動画をやりはじめた頃は、再生数とか気にしちゃっていたんですが、だんだんやっていくうちに、そうじゃないよなっていう感覚になってきました。

まさに「おっぱっぴー(All People Happy:みんな幸せ)」ですね!

子どもの時はいろんな刺激を受けた方がいい。動画を見る、人と話す、本を読む…などのバランスが大事。

「こども定点」の結果についてもお話を聞かせてください。「動画をみる」という項目は、〈ふだんしていること〉で2位、〈これからしたいこと〉〈よくする趣味や遊び〉で1位となりましたが、この結果についてはどうお感じになりますか。

動画を見ている子どもが多いなっていうのは感じます。同時に、そろそろ保護者や大人がその環境づくりみたいなことをしてあげないといけない時期でもあるのかなと。動画を見て育った子が将来どうなるかは、まだ見えないと思うんですが、例えば演劇をやっている人が、最近の若い子は「間」ができないみたいなことを言っていたんです。動画を早送りで見ているから「間」がうまくとれないと。情報収集能力は高いけれど、人とのコミュニケーション能力も大丈夫かなって思ったりもします。大人でもそうですが、動画やスマホには見始めると止められなくなっちゃうような性質があるので、それをコントロールしてあげることが必要なんじゃないかな。

僕の動画を見てる子たちも「もっと見たい!もっと作って!」って言ってくれるけど、やっぱりバランスが大事だと思うんですよね。動画を見る時間と、人と話す時間と、本を読む時間と…、っていうようなバランス。特に子どもの時はいろんな刺激を受けた方がいいと思うので、別に動画が悪いとは思わないんです。わからないことを動画で勉強するっていうのはすごく効果的だと思うんですよね。僕も興味あることがあったら、本の解説動画とか、専門家の人が話している動画とかを見て「ああ、なるほど」って思ったりするので。主体的に情報を取りに行く時と、流されるように見てしまう時があるので、そういう動画の見方や使い方については授業とかでもやったほうがいいんじゃないかと思います。

最近お子さんが生まれたばかりだそうですが、将来、お子さんが大きくなって「もっと動画をみたい!」って言われたらどうされますか。

まずは、時間で制限とかでしょうか。僕も子どもの頃、テレビゲームの時間を制限されていましたが、それはやったほうがいいんじゃないかなと思います。時間の感覚の勉強になるかもしれないし。後は、身体を動かすことは大事かなと思っています。

小島さんはヨガもやってらっしゃいますよね。身体を動かす系の動画を作ったりはしないんですか。

実はもう作っているんです。「エクササイズ道」っていう動画。「道」とかいて「うぇ~い」。やり始めてすぐに骨折しちゃって少しお休みしてから、最近は作れていないんですけど、今2本くらい公開しています。キッズヨガもネタだけは作っているんですけど。

小島さんのキッズヨガ、絶対子どもにウケると思います!楽しみにしています。身体を動かすこと以外では他に何かありますか。

最近ハマっているのが睡眠で、睡眠系の動画をよく見ています。「日本人は寝なさすぎだ」ってよく言われていますが、結局それによって、大人も子どもも起きているときのパフォーマンスが下がったりする。特に、子どもの睡眠時間は世界的に見ても低いらしいのですが、それは大人がそういう夜型の生活をしていることが原因らしい。だからいまは睡眠時間を増やすようにしていて、もともと5時間くらいだったのを7時間を目標にして、今は6時間台になりました。寝る時間も1時間は早くなったかな。体を動かしていると早く寝れるから、しっかり身体を動かしたり。あとはこれまでは移動中、眠い時に踏ん張って起きてたんですが、最近は身体のリズムに身を任せるようにしています。
それから、最近は野菜のことをもっと盛り上げたい!という気持ちがありますね。

野菜に注目したきっかけは何かあるんですか。

もともと「ごぼうのうた」など、野菜の歌を作って公開していたんです。そうすると農業系の子どもの食育雑誌の連載をやらせてもらえるようになって、いろんな農家さんに会ったり収穫体験をしたりするうちに、どこにいっても農家さんが「跡継ぎが…」みたいなことを言うんです。そういうのを何とかしたいなと思うようになって。とにかく野菜はもっと食べた方がいろいろいいんですよ、医療費も減るかもしれないし。

確かにそうですよね。自給率アップだけじゃなくて、健康にもいいし。

そう。そういうのをやっている芸人はいないから(笑)。みんながやっていると、すぐ埋もれちゃうから、あんまりやっていないところを狙いたいみたいな気持ちが根本的にはあるんです。動画は今いっぱいいるじゃないですか、だからそこはもう他に任せて、自分は違うことをしようかなと。

子どもは根本は変わらない。でも普段見ているものが違うと、その違いはある。

最後にもうひとつ。今の子どもとご自身の子ども時代を比べて、変わったこと、変わらないことって何か感じますか。

根本は変わらない気がしますけどね。無邪気だし純粋な部分は変わらない。でも自分の頃と普段見ているものが違うのでその違いはある。普段から動画を倍速で見ているからか、リアクションも倍速!みたいになっている子とかいますよ。しかも動画って編集しているからそれを自然と顔で真似ている(笑)。自然とそういう速い動きをする子がいてちょっと驚いたことがありますね。

子どもたちの反応は今も昔も変わらないですか。

変わらないと思います。シャイな子はシャイだし、ノリのいい子もいるし。前に調理実習のあるロケがあった時に、こっちでキャベツのサラダ、あっちでキャベツのカレーを作っていたんです。初めにサラダの方に参加していたんですが、そのときにキャベツの芯を食わせてくる子がいて(笑)。で、そのあとにカレーチームに行ったらそっちでもキャベツの芯を食わせてくる子がいて、あとで聞いたらこの二人は姉妹だったんですよね(笑)。子どもってやっぱり親とかきょうだいとか家族とか、そういう家庭環境からいろいろと影響を受けてるんだろうなと思いますよね。

学校の先生の影響はどうですか。小島さんの学生時代、思い出に残っている先生や教わり方ってありますか。

小学校2年生の時に、担任が音楽の先生でもあったので、九九の歌を作って歌ってたんですよね。いんいちがいち、いんにんがに、いんさんがさん♪みたいな歌。たぶん先生のオリジナルだと思うんですけどね。それは30年以上たった今でも覚えてます。
あとは、学級新聞を作ってくれる先生とか、月光仮面を歌ってくれたとか、長渕剛さんの「乾杯」を歌ってくれたとか、意外とそういう脱線していることのほうが憶えている。だから自分の動画もそっちに近いものの方が印象に残るんじゃないかなっていうのはありますよね。歌とかそういうものにのせた方が残るだろうな、と。

なるほど、小島さん自身が子どもの頃に受けた影響が、いま小島さんが作られている動画にもつながっているんですね。
今日は、動画の話をきっかけに、睡眠や運動、野菜の話までいろいろなお話をお聞きできてよかったです。どうもありがとうございました。

こども定点2023調査結果はこちら


小島よしお

お笑い芸人・タレント。1980年、沖縄生まれ千葉育ち。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。2007年に「そんなの関係ねぇ!」でブレーク。2020年からYouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」「小島よしおのピーヤの休日【ピーヤTV】」などの動画配信で注目を集める。現在は、日本各地を巡って子ども向けライブを精力的に行なっている。

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