聞き手たちがふりかえる、 中学2年生との対話 【2022年度インタビュー編】

2022年度、私たちはさまざまな場所にいる22名の中学2年生にインタビューをおこないました。そして、今年1月から週に1本ずつ、インタビューの内容を公開してきましたが、このほど22本すべての公開が完了しました。
※公開した記事の一覧はこちら (#034〜#055が2022年度実施のインタビュー)

インタビューに協力してくれたみなさんは、住んでいる場所も、好きなものも、「らしさ」もばらばら。みずからの関心・体験を言語化することに慣れている子や対話によるコミュニケーションの得意な子もいれば、そうでない子もいました。しかし、それぞれの写真と語りは、どれも個人の生活や趣向、そしてある種の切実さに根ざしており、なんともいえない魅力があります。

そこで今回は、インタビューの聞き手をつとめたこども研究所の研究員2名と本サイトの編集担当による、2022年度インタビューのふりかえりをお届けします。

インタビュー後記1

「好きなこと」をテーマにすればあたりまえかもしれないが、それでも感心するのは、自分の興味を追求する子どもたちの姿だ。将来を見据えてスポーツに打ち込む子、3Dプリンターを駆使してもの作りに熱中する子、推し活の延長で韓国語翻訳を始めた子、多種多様な人が匿名で集まるオンラインゲームを通して人間観察をする子…。平凡な中学生だった私が想像するレベルを軽く超えている。近年はYouTubeなどからプロの技やスーパープレイを習得する子がいる一方で、いきなりレベルの高いものを見せられて「ここまでは無理」と、やる前に諦めてしまう子もいるとか。子どもたちの誰もが、“自分なり”の好きなことを見つけて、マイペースで追求できることを願う。

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2022年度は、コロナ対策が常態化する一方で、3年ぶりに行動制限のない夏休みになるなど、少しずつ出掛けたり、人に会ったりができるようになった一年。私たちも、子どもたちが集い、学ぶ、さまざまな場所に出掛け、先生や指導員、サポーターの方にお話を聞く機会を得ました。そんな中から、本プロジェクトには、ラグビースクールやスポーツクラブ、遊びの学校、私設ライブラリー、フリースクール、発達障害の子のための専門塾、私立の中学校などに通う中学2年生にご協力をいただきました。また、2019年当時小学5年生だった子たちに再会して、再びインタビューできたのもうれしい出来事でした。 (研究員F)

インタビュー後記2

14歳の私は、どんな「好きなこと」を撮っていただろう。
ピアノ、楽譜、学校の校庭、スクールバス、ドラマを録画したビデオ、友達との交換日記・・・。きっと「モノ」が多そうだな。

色褪せた14歳の記憶を手繰りながら写話プロジェクトに参画し、丸3年が過ぎた。インタビューに参加してくれた14歳が撮った「好きなこと」の写真を見ながら、どうして「好き」になったのか、どれくらい「好き」なのか、共通の「好き」を持っている友達とは何をして過ごすのか、毎回あれもこれも聞いてみたい欲求を抑えながらのインタビューだった。中には、「これは親に言ってないんだけど・・・」「この話は実は親には〇〇って話になっていて・・・」みたいな内緒話もあって、学校の廊下で友達から秘密を耳打ちされる時のドキドキ感が一瞬蘇った。だんだん、インタビューをするというより、おしゃべりを楽しむ感覚になり、みんなの「好き」の聞き手になった。たくさんの「好き」を教えてくれてありがとう。 (研究員T)

編集後記

本サイト「ありのままの子ども」の編集作業は、大きな喜びと大きな苦痛を私にあたえる。

喜びというのは、自分と同じ時代に、同じ国で暮らしている(なかには街ですれ違っているかもしれないほど近い地域に暮らしている子も!)14歳前後の生のことばに毎週ふれられることだ。思いが強すぎて愛情がダダ漏れているような語りには共感といとおしさを覚え、沈黙の末にぽつりと放たれたことばには、その奥にどんな思考があったのかと、ふいに思いをめぐらせてしまう。なにより、こんなにも好きなものや好きなポイント、好きなものに対する態度やアプローチにバリエーションがあるものかと驚かされる。自分に見えていないだけで、これほど豊かな世界が人の数だけ広がっているのかと想像すると、ままならない日常もすこしだけいとおしく思えてくる。

苦痛というのは、編集という作業と分かち難く結びついている。簡単に作業の流れを書くと、次のような具合だ。インタビューの録画や録音をもとに、言い間違いや言い直しはもちろん、「あー」「えっと」「まぁ」といったフィラーと呼ばれることば、言い淀み、無言なども、できるだけ忠実に起こしてもらい、文字になったことばの連なりをたどりながら、語り手と聞き手との会話を脳内で再現していく。そして会話の流れやバイブス、テンポ、リズムなどをできるだけ壊さないよう、正確さと読みやすさのバランスをとりながら膨大なことばを切り詰め、記事を仕立てていく。問題はここだ。フィラーひとつとっても、その位置にあるとないとではニュアンスが変わってしまう……などと考え出すと、編集イップスとでもいった状態に陥ってしまう。会話は意味の伝達だけでおこなわれるものではない。その語り口にも大切な役割がある。だからこそ、手を入れることで大切な何かを損なってしまう恐怖のようなものが、本サイトの記事の編集作業にはつきまとう。

そんな編集の恐ろしさと罪深さを感じながら、それでも中学2年生たちの語りや写真のもつ魅力にあらがえず、次のインタビューの文字起こしを心待ちにしてしまう自分がいる。あぁ、度し難い。 (編集N)

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