トピックス調査

家族のこと、どう思う?

「家族仲が良い」と感じている小中学生は9割以上

毎年11月第3日曜日は「家族の日」。そこで今回は「家族」をテーマに調査しました。忙しい日常の中で家族全員が一緒に過ごす機会は限られていながらも、たとえばデジタルツールでのコミュニケーションや母と娘でみれば「推し活」を一緒にするなどの親子行動を通じて、家族との間で仲の良い関係性を築いていることが、子どもたちの視点を通して見えてきました。

「家族仲が良い」は9割以上。家族内の役割分担がシームレス化。お父さんも お母さんもマルチプレイヤー。

家族の仲の良さを聞いたところ「仲が良い計」が9割を超えました。特に小学生では約半数が「とても仲が良い(48.7%)」と回答し、家族仲の良さがわかります。

中学生は小学生に比べて「とても仲が良い」のスコアが約半減しますが、TOP2計*でみると7割以上が「仲が良い(74.7%)」と感じていました。
*(とても仲が良い+まあ仲が良い計)

家族内の役割では、お父さんは「お金をかせぐ人」が最も高く87.0% 。続いて「自分のことを応援」「困った時に助けてくれる」「ほめる人」「いっしょにお出かけする人」「注意する人」など精神的支えに関する役割が約7割。また家族の世話や家事も4割を超えるスコアで、家事にも関わるお父さんの姿がうかがえます。

お母さんは「ごはんを作る人(90.8%)」が最も多く、2位、3位はお父さんと変わらず「自分のことを応援してくれる人(89.0%)」、「こまったときに助けてくれる人(88.7%)」でした。またお母さんはそれ以外にも家事全般や相談相手など多くの項目でスコアが8割を超える結果となりました。

子ども自身は「家族をもり上げる人(43.2%)」「そうじやかたづけをする人(24.0%)」と自認。家族それぞれが協力しながら、自分にできる役割を果たそうとする様子がうかがえました。

家族全員がそろう限られた機会は「休日の夕ごはん」7割。

ふだんの生活行動の「家族全員でいっしょにしている」ことで半数を超えたのは「学校のない休日の夕ごはんを食べる(69.2%)」のみでした。

両親の仕事、子どもの学校や習い事などの忙しい日常の中で、家族全員が一緒に過ごせる機会が限られているのかもしれません。

小中学生のスマホ所持者6割強が「メッセージアプリで家族と連絡を取り合う」 

情報端末の所持について聞いたところ、スマートフォンの所持率は全体で65.2%。小学生では45.7%、中学生では84.7%。今回の調査ではスマートフォンの所持率がキッズ携帯を上回りました。

スマートフォン所持者のうち、6割強が「メッセージアプリで個別に連絡を取り合う(58.6%)」、約半数が「メッセージアプリで家族と写真をシェアし合う(49.9%)」と回答。スマートフォンなどの情報端末を介して、家族間コミュニケーションが行われている様子が分かりました。

会話内容はお父さん・お母さんともに1位「学校」2位「友達」のこと。

ふだんの会話内容は、全体でみると、お父さん、お母さんともに1位「学校であったこと」2位「自分の友達のこと」。3位は、お父さんでは「家族の予定やおでかけ先のこと(47.9%)」、お母さんでは「学校の先生のこと(67.1%)」でした。学校や友達の他にも、勉強や習い事、部活やクラブ活動、自分の趣味など、多岐にわたる内容で会話していることが分かりました。

お父さんと話すことを男女別でみると、男子は「自分の友達のこと(54.9%)」や「テレビや新聞で知ったニュースや出来ごと(46.3%)」、女子は「家族の予定やお出かけ先のこと(50.8%)」について話す傾向がありました。

お母さんと話すことを男女別でみると、総じて女子の方が話す内容のバリエーションが多く、「自分のファッションや髪型のこと(58.7%)」「自分の好きなアイドルやアニメなどのこと(47.5%)」「自分の顔やからだのこと(46.0%)」が、特に高いスコアとなりました。

「ゲームやスポーツ」をお父さんと、「推し活」などの「嗜好や楽しみ」をお母さんと共有。

ふだんお父さん・お母さんといっしょにしていることを聞いたところ、お母さんよりもお父さんといっしょにすることが多い行動TOP3は「スポーツをする(父-母差分+19.4pt)」「ゲームをする(父-母差分+13.8pt)」「スポーツの試合を観に行く(父-母差分+8.7pt)」。

またお父さんよりもお母さんといっしょにすることが多い行動TOP3は「料理やスイーツをつくる(母-父差分+34.4pt)」「美容院・床屋さんに行く(母-父差分+23.0pt)」「好きな音楽やドラマを教え合う(母-父差分+18.1pt)」でした。

男女別でみると、男の子はお父さん、お母さんいずれとも、全体と同じ傾向であるのに対し、 女の子とお母さんのペア行動は特徴的。「カフェでお茶をする(38.8%)」「洋服をかしたりかりたりする(23.6%)」「メイク・スキンケア用品をかしたりかりたりする(27.9%)」「好きなアイドルやアーティストなどを応援(推し活)する(18.5%)」など、お母さんと女子の嗜好や楽しみを共有する関係性がうかがえました。

家族といると「安心する・ほっとする」「ありのままでいられる」。

家族といる時の気持ちは、全体で、「安心する、ほっとする(65.5%)」が最も高いスコア。続いて「ありのままでいられる(54.7%)」「楽しい・笑顔になれる(51.7%)」となりました。

属性別でみると、中学生では「何も考えなくていい(50.3%)」が3位にランクイン。小学生と比較して「楽しい・笑顔になれる」はその差は-17.3ptと5位に下がるものの、家族といる時間は自然体でいられる時間なのかもしれません。

小学生は家族と「同じ時間・場所」の共有、中学生は「精神的な支え」が大事。

「家族にとって大事だ」と子どもが感じることでは「いっしょに住む(64.3%)」「いっしょにごはんを食べる(62.5%)」という「同じ時間・場所」の共有が上がるとともに、「どんなときでも味方になってくれる(62.7%)」「こまったときに助けあえる(61.8%)」「いっしょに楽しい時間を過ごせる(61.5%)」など「精神的な支え」に関する項目も6割以上で拮抗しています。

属性別では、小学生では相対的に「同じ時間・場所」を共有することの重要度が高いのに対し、中学生になると逆転し「こまったときに助けあえる」「どんなときでも味方になってくれる」など「精神的な支え」の重要度が高まることがわかりました。

保護者にも同じ質問をしたところ、「一緒にごはんを食べる(69.0%)」「一緒に楽しい時間を過ごせる(64.8%)」が上位2項目として6割を超え、「同じ時間・場所」をより重視する傾向が見られました。

約7割が「もっと、家族と話したい」「もっと、家族の役に立ちたい」。

全体でみると、「もっと、家族と話したい」がTOP2*で73.8%、「もっと、家族といっしょにいたい」がTOP2*で69.8%でした。
一方で「もっと、家族の役に立ちたい」がTOP2*で68.5%となっており、子どもたちも、家族の一員として貢献したいという気持ちを持っていることがわかりました。*(そう思う+ややそう思う計)

属性別でみると、学年があがるにつれいずれも低下していく傾向が見られ、中学3年生のスコアは小学4年生に比べて「もっと、家族と話したい」が27pt、「もっと、家族といっしょにいたい」が35pt低下。一方で「もっと、家族の役に立ちたい」も低下傾向は変わりませんが、その下がり幅は19ptにとどまっており、他2項目に比べてゆるやかになっています。

保護者にも同じ質問をしたところ、「もっと、家族と話したい(81.2%)」「もっと、家族といっしょにいたい(75.0%)」「もっと、家族の役に立ちたい(74.5%)」で、いずれも子どもよりも高いスコアとなっていました。

多くが家族の存在や支えを当たり前と思わず、ありがたみを実感。

家族に対して「ありがたいなぁ」「うれしいなぁ」と感じた出来事や「腹がたつ!」「ムカつく!」と思った出来事についても聞いてみました。

家族の存在を「ありがたい」と感じた出来事として挙げられたのは、食事や送迎といった普段の何気ないシーンから、頑張った自分を褒めてくれた思い出、進路や友達関係などで悩みを抱えてくれる時に寄り添ってくれた時間など、多岐にわたりました。

大小あれど「良い時には誰よりも褒めてくれ、悪い時は味方となり寄り添ってくれる」家族の存在にありがたさを実感していました。

●食事や送迎などのサポート

  • お母さんがいつも家族のためにご飯を作ったり、洗濯したり、掃除したりしてくれる。学校で嫌な事があった時に担任の先生に解決できるように相談してくれる。(小4男子)

  • いつも当たり前だと思っていた、ご飯を作ってくれて、お弁当を持たせてくれることが、他の友だちには当たり前ではないことを知ってから、母にすごく感謝しています。父は休みになるとやりたいことを一緒にやれるようにいつも計画を立ててくれるので、楽しみにしています。(中2男子)

●勉強や進路についての助言

  • いま中2なので、高校進学についてちょっと考えていて、父も母も親身になって自分のやりたいことからいろいろな進路の可能性を調べて教えてくれること。うれしい。(中2男子)

  • テスト勉強等困ったときにお母さんや、兄弟が夜遅くまで一緒に付き合ってくれて助かりました。テストでは思った以上の成績を取りました。(中2男子)

●友人関係や学校での出来事に対する相談

  • 学校で嫌なことがあった時学校を休みたいと言ったら怒らないで休ませてくれて好きなレストランに行ったこと。(小4男子)

  • 学校で友達と喧嘩してひとりぼっちになった時期に支えてくれたこと。お姉ちゃんは一緒に学校に行ってくれた。(中2女子)

●病気や怪我のときのケア

  • 病気で学校を休んだ時にママが仕事を休んでそばにいてくれたこと。(小4女子)

  • 僕が学校で頭を怪我をしたときに、すぐに学校まで迎えに来てくれて、病院に連れて行ってくれたときにありがたかった。(小5男子)

●お出かけや旅行などの思い出とともに

  • おばあちゃんの家に行って、水族館に連れていってもらって帰りにオモチャを買って貰いお金もくれた。すごくうれしい日だった。(小5男子)

  • 泊まりで鈴鹿サーキットに連れて行ってもらって、たくさん遊ばせてもらってたくさんおいしいものを食べさせてくれて家族の仲がもっと良くなったと思った。(小5男子)

●家族の存在そのものへの感謝

  • 家族が当たり前のようにいっしょに住んでいられること。みんなでご飯を食べたり、遊びに行ったり、テレビをみたり。そんな当たり前のことを普通に過ごせることがうれしいと思う。(小5女子)

  • 私の居場所が必ず一つあること。(中1女子)

家族の存在を「腹がたつ!」と感じた出来事として挙げられたのは、兄弟喧嘩など理不尽なことで注意されたと感じた瞬間や、話をきちんと聞いてもらえず決めつけられたときなど、踏み込んでほしくないところを察してもらえなかったとき、親の機嫌に振り回されていると感じるときなどが挙げられ、「自分の立場や意見を尊重してもらえなかったと感じる気持ち」が、家族に対してのネガティブな感情につながっている様子がみられました。

●兄弟・姉妹の喧嘩

  • お兄ちゃんとゲームの事でケンカした時。(小4男子)

  • 妹が僕の分のとうもろこしを食べちゃった事。(小6男子)

●兄弟・姉妹での不公平感

  • 兄弟ケンカをしていて、お父さんに僕だけ怒られた、三人とも悪いのにムカついた。(小5男子)

  • 弟と喧嘩した時に自分は悪くないのに怒られたとき。(中2女子)

●勉強や宿題に関して怒られること

  • お父さんに学校の準備やお手伝いをやっているのにもうやったんかとしつこく聞かれる事。(小6男子)

  • テストでダメだったとき、ものすごく怒られた。頑張る気力が失せた。(中3男子)

●ゲームやスマホなどの制限時間

  • ゲームやタブレットのやり過ぎで怒られた時にムカついてしまう。(小5女子)

  • よくゲーム機を隠される事。(まあ時間制限を守らない自分が悪いのだが…)(小5男子)

●理不尽なことで怒られること

  • お父さんが理不尽に注意してきたり怒ったり反対してくること。(中2男子)

  • ちょっと機嫌が悪いと、いつもは言わないのに、洗濯物を畳んだり、お風呂を洗ったり、食器を洗ったりしろと家のことを手伝いなさいと口うるさく言ってくること。今からやろうとしているタイミングで宿題はやったのかといいはじめること。(中3女子)

●そっとしておいてほしいこと

  • お父さんにニキビがたくさんできた顔をバカにされたこと。(小6女子)

  • 学校で友だちとケンカをしてしまったことについてあれこれしつこくお父さんに聞かれたことがすごく嫌でした。詳しく話をしないのは言いたくないからだと空気を読んで察してほしかった。(中3女子)

●わかっていること・やろうと思ってたことを言われる

  • やろうと思ってたことを、やりなさいと言われた時。家の手伝いとか、片付けとか。(小6女子)

  • わかってることをくどくど言われるのがムカつく。(中2男子)

「どんなことでも構わないので家族に伝えたいことは?」と聞いてみたところ、多くが「ありがとう」の気持ち、「大好き」の一言、いつまでも健康でいてほしいと願う気持ち、ずっと一緒にいたい気持ちといった言葉があふれていました。

一方、日常生活の中でのささやかな、そして切実なお願いごとも。しかし総じて家族への前向きな思いであふれる自由回答からは「家族の存在」そのものが子どもたちの強い安心感となり、それを当たり前と捉えずに、真っ直ぐに感謝する子どもたちの姿がみられました。

●感謝の気持ち

  • いつもありがとう。ぼくもみんなのことを助けたいから、いつでも言ってください。(小5男子)

  • この家族が僕の家族で良かった。(小6男子)

  • いつも味方でいてくれてありがとう。家族がいてくれるから毎日楽しいし、嫌なことも忘れられて元気でいられるから本当に感謝しています。(中2男子)

●大好き!な気持ち

  • いつもありがとうだいだいだいだいだいだいすきだよーーーー(小4女子)

  • 産んでくれてありがとう。愛してるよ。(中1男子)

●健康を願う気持ち

  • これからも、健康で、普通に生活して行こうね。(小6女子)

  • 友だちの両親で病気で亡くなった人がいて、すごく悲しいです。自分の両親には恩返しできるくらい、嫌というくらい長生きしてほしいです。(中2男子)

●もっと・ずっと一緒にいたい気持ち

  • お母さんともっともっと遊びたいです。今月はまだ遊べていないので、もっと遊びたいです。(小4女子)

  • これからも、一緒に生きていこうね。(小6女子)

●いろいろなお願いごと

  • 社会の愚痴をこちらに言って来ないで。(小4女子)

  • 反抗期なのでかんべんしてください。(中1男子)

おとな研究員
おとな研究員
おとな研究員

「家族」って何なんだろう?基盤であることの安心感と、近すぎる関係だから時にはうまくいかないことも、切っても切れない関係だからこそ、ともすれば“しがらみ”もあります。全部ひっくるめての「家族」であり、その様相・形はさまざまであるはず。

子どもたちの瞳には「家族」がどのように映っているのか。そんな思いが調査のきっかけです。
全員一緒に過ごせる時間は限られながらも、父親は「自分のことを応援」「困った時に助けてくれる」存在のほか、家族の世話や家事など4割超。母親も家事全般や相談相手など多くの項目でスコアが8割を超える結果と、子どもたちに映るそれぞれの役割の広がりが垣間見えました。

家族の存在に対し、自由回答からは忙しい日々の中でご飯を作ってくれること、習い事や部活、勉強へのサポート、そして友人関係での悩み事に対して寄り添ってくれたことなど、たくさんの感謝の言葉が並ぶ一方、理不尽な怒られ方などへの小言も。

しかし、そんなときがあっても家族へ伝えたいことは「ありがとう」を筆頭に「大好き」「これからも健康でいてね」「ずっと一緒にいたい」。そんな率直な想いがあふれる言葉一つ一つから、子どもたちにとっては何か特別なことが大事なのではなく、毎日の生活の営みから生まれる関係性こそが大切なのではと感じさせられました。

「家族仲が良い」計は9割。仲の良さのみならず、家族がいてくれることへの感謝の背景にはもしかしたらコロナ禍や自然災害などの不安定な社会状況も要因としてあるのかもしれません。あらためて「仲の良さ」とはどこからくるのか、そもそも「仲が良い」とは何か。その概念自体への振り返りが必要だと感じています。
                                        (研究員 田口)

調査概要

小中学生男女を対象に、子どもをとりまくさまざまなトピックスについて聴取する調査です。「子ども」「ことば」「教育」に関するトピックスについて、子どもたち自身がどう感じ、考えているのかを明らかにすることを目的としています。

調査エリア
全国
調査対象
小学4年生~中学3年生の男女とその保護者(600組)
調査日
2024年9月22日
調査分析
公益財団法人博報堂教育財団 こども研究所
調査方法
インターネット調査
調査機関
QO株式会社

子どもの回答にあたっては、保護者の監督のもとで行っております。

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