もうすぐ200人!記念 歴代メンバーでふりかえる写話プロジェクト 【中編】

2019年にスタートした写話プロジェクトは、これまでにのべ189人の子どもたちの声に耳を傾け、レポート冊子やウェブサイトにアーカイブしてきました。プロジェクト開始から現在までの間には、コロナ禍をはじめとする大きな社会変化がありました。デジタルテクノロジーの発達は、現在進行形で私たちの生活を変えています。
このような激動の時代にあって、子どもたちはどのように変化したのでしょうか。2025年度におこなったインタビューの公開完了を機に、プロジェクトの立ち上げメンバーと現メンバーが集合。これまでの歩みをふりかえりつつ、子どもたちの変化とプロジェクトの今後を語り合いました。

おうち時間で起こった変化

ここまでは写話の成り立ちと、コロナ禍で研究員のみなさんが子どもたちに直接インタビューするようになったことで、聞き手として心がけるようになったことをうかがいました。ところでコロナ禍を経て、子どもたちが撮る写真や話す内容に変化はありましたか?

F

コロナ禍の2020年は外の写真がほとんどなく、家の中のものを撮った写真の割合が高いですね。アニメやマンガ、自分で描いた絵の写真なんかが多くて、写真からも語りからもコロナ禍は内向きだったことが分かります。

W

当時は家にこもらざるを得なかったし、やっぱり閉塞感があったのかなと思いますね。

K

あの頃は、外に出られないぶん、お菓子づくりやアクセサリーづくりなど、ハンドメイドも流行りましたよね。インタビューで子どもたちの話を聞くと、おうち時間を大切にするというのはいまも続いています。絵を描くのも、個人の趣味でひっそりやるものではなくて、みんなに言える趣味になっていて。最近の編み物ブームも、あの頃のハンドメイドから地続きでつながっているんだなと思います。

F

SNSが広がって、自分の作品を公表する場や人の作品を見る機会が増えたのもあると思います。インターネットとの関係でいえば、ゲームはコロナの前から人気ですけど、1人でやるもの、リアルで一緒にやるものから、だんだんネットワークで楽しむものに、遊び方が変わった感じもしますよね。2020年は友だちとオンラインで『フォートナイト』をする話がたくさん出てきました。

K

いまは『ROBLOX』など別のゲームの名前も出るようになっていて、オンラインでゲームをすることは子どもたちにとって当たり前になりましたね。

F

あとは、アニメやアイドルを「推す」ことに関する写真や話が表に出てくるようになったというか。好きとかファンとかじゃなく、「推し」としてその人やグループに向き合う感じがすこしずつ増えてきたかなと。

K

歌手じゃなくて「歌い手」だったりとか、イラストレーターじゃなくて「絵師」だったりとか。写真へのコメントやインタビューでの発言を読むと、推しの肩書きに対するこだわりも感じられますよね。

家族や学校との新しい距離感

それまでは一部の人のものだと思われていたインターネット文化が、コロナが直接的な原因かどうかはともかく、そのあたりから急速に一般層に広まった感じはあります。2020年のインタビューで複数の子から名前があがった歌い手・まふまふさんが、翌2021年の『NHK紅白歌合戦』に初出場し、ボカロ曲を歌ったことはネット文化が社会の表舞台で受け入れられた象徴的な出来事とも言われています。ところで、子どもを取り巻く人間関係については、何か変化を感じることはありますか?

F

いつ頃からそうなったのかはよく分からないんですけど、「お母さんが一番の友達です」みたいな子が普通になりましたよね。お父さんとの関係も悪くないという子が多いですし、コロナ禍はお父さんもずっと家にいたので、それで家族の密着度が高まったという面もあるかもしれません。ただ、それ以前から「いまの子は反抗期がない」なんて言われてもいたので、コロナ禍で急にはじまったことではないかもしれないですけど。いずれにしても家族みんな仲良しという子は多い印象があります。

家庭内以外の日常、たとえば学校生活などでの変化は感じますか?

F

コロナの影響だけではないですが、不登校に対する意識は変わってきていると思います。普通にしゃべっていて、突然「実は学校行ってないんですよ」と言う子がいたりして。そういう子が写話に参加して話そうと思うようになってきたというか。すこし前の時代であれば、「学校に行くのが当たり前」で「不登校であることを隠したい」という人が多かったと思いますけど、最近は親御さんの認識や態度も変わってきているのかなと思います。

K

親御さんが見守っている感じが伝わりますよね。

W

ここ5年くらいですごく変わっている感じがしますね。世の中の一般的な見方として、学校に行かないことが必ずしも悪いことじゃなくなってきた、というのはあると思います。

過去と現在と未来が同時にある

個々のインタビューについてもうかがいたいのですが、これまでのインタビューで印象に残っているエピソードを教えてください。

W

広島県江田島市のEさん(『写話による、ありのままの子どもvol.2』収録)ですかね。

F

イカ釣りしてた子ですよね。

W

そうそう。牛乳パックで自分が乗れる大きさの船をつくって沈んだとか。いい生活ですよね。海がそばにあるっていうのは、いい環境だなと思って。島根県大田市のハム☆汰郎さん(写話 #093)も何回ウナギさばいてるんだっていう……

K

自分でウナギを捕るための罠をつくって、そのつくり方も近所の釣り友達の70歳のおじいちゃんに聞いて、捕れたかなって見にいって。本当に楽しそうに話してくれて、うらやましいくらしだなって思います。

W

一方で福岡県福岡市のMNさん(『2020年の14歳 Part3 近畿・中国・九州・沖縄に在住の14歳』収録)は、海のそばに住んでるけど海に行ったことがないバーチャル中心の生活で。この二人は対極という感じで印象に残っています。あとは推しのための祭壇のようなコーナーを自室につくって誕生日会をやってる神奈川県三浦エリアの水色さん(写話 #035)も、ずいぶん宗教めいたことをやっているなって、新鮮でした。

Fさんは、印象に残っているインタビューはありますか?

F

たくさんあって絞りきれないんですけど、神奈川県横須賀市のそらさん(写話 #003)はかなり印象的でした。高校2年生になったら大阪で友達と二人暮らししたい、そして一軒家を借りて大きな犬を2匹飼って、コスプレしながら美容室をやりたいという、かなり具体的だけど現実味があるようなないような、ちょっと不思議な夢を話してくれました。

W

写真って過去ですよね。でも、しゃべっているのは現在で、ときどき、その子の未来に関わる要素が出てくることもある。そうやって将来の話が出てくると面白い。そらさんはかなり自覚的だと思うんですけど、未来の話って、その人の希望というか、本人も意識していない「こうしたい」という思いが引き出されるところがあって、セラピー的なところもあり、面白味がありますよね。

その瞬間にだけ引き出されるもの

F

そらさんは夜の景色もたくさん撮っていて。夜の写真ってちょっと珍しいんです。書かれたり話されたりしている内容に意識が向きすぎるとつい見逃してしまうんですけど、写真自体が自然と語っていることもあると思うんです。そういう意味でも印象に残っているインタビューですね。

Kさんはいかがでしょう?

K

長野県のカッパさん(写話#133)ですね。演歌が好きで、商店街で演歌の流しをやってて、インタビューの最中にも歌ってくれたんです。ボードゲームも大好きで、自分で育てた野菜を売ってボードゲームを買う軍資金にするなど、ひとつひとつのエピソードが本当に面白くて。最後は時間が足りなくなり、あー、もっと話を聞きたかったって思いました。

インタビュー当時、カッパさんは小学5年生で、その瞬間だからその語りができたけど、1、2年後だったらこうはならなかったかもしれない。それもこども写話のひとつの面白さだと思います。子どもはやっぱり成長するし、変わりますからね。

あとは、Fさんが聞き手のインタビューですけど、海外にルーツがある大阪府池田市の秋さん(写話 #110)。日本語はあまり得意ではないとのことだったんですけど、写真が上手でした。後日談ですが、インタビューをとおして写真が得意なことに自分でも気づいて、写真コンテストに応募して入選までしたんです。それをきっかけに「もっと写真の勉強をしたい」と思い、日本語もがんばって勉強して、高校にも合格したと聞きました。この話は、涙なしでは語れない。写話が人の人生を変えることがあるんだなと。

W

素晴らしいですね。

K

写話の良さは、写真と言葉でやっていることだと思うんです。言葉でうまく表現できないことは、いまの世の中ですごくハンデになるじゃないですか。動物行動学者のテンプル・グランディンという人が書いた『ビジュアル・シンカーの脳』という本もありますけど、そういう人たちにとっても自分を見つめなおしたり、表現したりする機会になっているのならばうれしいなと思います。

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